店のこと
五十八年で、 献立は半分に 減りました。
祖父の代は三十品ありました。いまは十五です。
減らしたぶん、切れるまでの回転が速くなりました。
代替わり
三代で、
変えたところだけ。
続いた年数そのものは、味の説明になりません。何を替えたかのほうが、たぶん役に立ちます。
- 一九六八年祖父が屋台をたたんで、この場所に店を出す。品数は三十を超えていた
- 一九七九年父が継ぐ。魚を、川向こうの市場で毎朝買うようになる
- 一九九五年建物を建て替え。土間をやめて、カウンターを八席にした
- 二〇一一年三代目に替わる
- 二〇一六年品数を三十から十五へ。売れ残りが出なくなった
- 二〇二三年だしを煮干しと昆布に戻す。祖父の代のやり方
- 二〇二六年五十八年目。壁の札は八枚
三代目
継いだとき、
五年つづけて赤字でした。
品数が多いほど客が来ると思っていました。三十品あると、夕方には十品ぶんが残ります。 残ったものは翌日に出せません。捨てていた量を数えて、十五に減らしました。
減らした年の売上は落ちました。落ちたぶんより、捨てなくなったぶんのほうが大きかった。 それで六年目に黒字へ戻っています。いまも、その十五から増やしていません。
厨房は二人です。私が焼きと揚げを、母が煮物と小鉢をやっています。 昼のいちばん混む一時間だけ、近所の学生に洗い場へ入ってもらっています。
一日の順番
のれんを出すまでに、
五時間かかります。
開けている時間より、開ける前のほうが長い。煮物とだしは、当日の朝にしか間に合わないものです。
- 六時だしを火にかける。煮干しと昆布は、前の晩から水につけてある
- 七時煮物を炊く。いったん冷ましてから、出す前に温め直す
- 八時半魚をおろして、開きにする。塩をあてて置いておく
- 九時半米を研ぐ。一回目は十一時に上がる量だけ
- 十一時ごはんが上がる。のれんを出す
- 十四時半昼を閉める。油を漉して、夜のぶんの仕込みへ
- 十七時二回目のごはんが上がる。もう一度のれんを出す
- 二十時半のれんを下ろす。明日のだしを水につけて帰る
器のこと
- 飯椀と汁椀は、二十年ほど同じ窯のものを使っています
- 欠けたら替えます。柄はそろえていません
- 汁椀は木です。持ったときに熱くないのは、そのためです
卓と椅子
- テーブルは建て替えのときのままで、三十年目です
- 丸椅子は座面だけ張り替えました
- カウンターは八席。ひとりで来る人がだいたいここに座ります
やっていないこと
- 出前と宅配はやっていません
- 予約も取っていません。並んだ順です
- 季節の限定もありません。お品書きの十五が、一年を通じて全部です