作っているのは、 三代目ひとりです。
青木宗一郎。祖父の代から、この町家で菓子を作っています。人を増やさないので、一日に作れる数がそのまま店に並ぶ数になります。
銘は、
答えるためにつけています。
上生菓子には一つずつ名前があります。聞かれたときに出どころを言えないものは、名前として弱いので使いません。立秋の四つは、こう決めました。
淡雪
冬の季語から
春先に降って、すぐ消える雪のこと。暑さの残る時期に冬の名を置くのは、涼しさを先に見せるためです。
初萩
秋の七草から
萩は暑さの残るうちに咲きはじめます。暦の上で秋になる立秋に、この一つを入れています。
早稲の香
稲の呼び名から
早く実る稲を早稲といいます。実る前の青い色をそのまま菓子の色にしました。香りは添えていません。
花野
秋の季語から
秋草の咲きみだれた野のこと。四つのうち、いちばん賑やかな一つにこの名を置きます。
道具は三つで足ります。
練り切りの形は、ほとんどこの三つで決まります。買い足したものより、削って使い減らしたもののほうがよく利きます。
- 三角べら
- 竹を削って作ります角の丸みで筋の太さが変わるので、菓子ごとに使い分けます
- 木型
- 桜の木。落雁を打つ型です祖父の代のものを、彫り直しながら使っています
- 茶巾
- 布で絞って形を出します絞る力がそのまま出るので、同じ形は二つとできません
一日は、餡から始まります。
5:00
小豆を炊く前の晩から水に浸けたものを火にかけます。渋を三度切って、砂糖は二回に分けます。
7:00
餡を冷ます炊きあがりは熱くて手で扱えません。冷めるあいだに、干菓子の型を打っておきます。
8:30
上生菓子を作る四種を八十個ほど。手が温まると生地がゆるむので、途中で何度か水につけます。
10:00
店を開ける硝子の棚に四つを並べます。ここからは売り場に立ちながら、次の日の仕込みをします。
15:00
上生菓子が終わるだいたいこのあたりで四つとも無くなります。残った日は、翌朝に数を減らします。
18:00
仕舞う棚を空にして、翌日の小豆を水に浸けます。ここまでが一日です。
三代、同じ場所で。
初代は昭和のはじめに、この通りで落雁と最中だけを売っていました。上生菓子を四つに絞って節気ごとに替えるやり方は、二代目が始めたものです。
建物は当時のままで、床だけを土間に戻しました。棚の硝子は割れるたびに入れ替えているので、そこだけ新しいままです。
行き方をくわしく
今日の四つが、まだ並んでいるうちに。
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